映画そして父になる福山雅治生い立ちと涙の理由
カンヌ国際映画祭で、パルムドール賞獲得予想1位となった映画「そして父になる」監督是枝祐和。
家族の喜びや葛藤が描かれ、多くの人の涙を誘ったその映画で主演を務めた福山雅治は、現地でも大注目を集めていた。
福山雅治が人前で初めて男泣きをした真の理由
その彼が、人前で初めて男泣きをしたのには理由があった。
2人兄弟の次男として、長崎市に生まれた福山雅治。
父は博打好きでほとんど家にも帰らず、家計を支えたのはパート勤めの母だった。
月20万円にも満たない収入。
家族旅行も外食も、買い物の記憶もない。
あるのは、女手ひとつで、懸命に二人の子供を育てる母の姿と、たまに帰ってきては大声でくだをまく酔っぱらった父の姿だけだった。
そんな福山雅治の中の家族観は彼の結婚観へも大きな影を落としていったようだ。
あるインタビューで、結婚しない理由を尋ねられると、福山雅治はこう答えている。
「結婚が遅いのは、おそらく自分の中に“家族”というものに対して、いい印象がなかったからでしょうね」と。
福山雅治が是枝監督へ自らオファー
福山が是枝監督と出会ったのは、まさに彼が家族という呪縛・にもがいていた時のことだった。
前述のとおり、福山が監督に持ちかけたことで生まれた今作。
初めて自らオファーをしたのにはこんな理由があったという。
「是枝さんの作品は、家族の良い部分だけでなく、家族だからこそ生まれてしまケぎこちなさや煩わしさをリアルに描いています。
そして、いずれの主人公も家族に悩まされながら、あるべき家族の姿を模索していく。
そんな是枝さんなら、ゆがんでしまった自分の家族観を再構築できるのではないかと、福山さんは思ったのではないでしょうか」 (音楽関係者)
監督から用意された役は、父親像をうまく思い描けない福山にリンクする「父性のない」父親役だった。
「是枝さんの現場は映画の撮影でありながら、ドキュメンタリーのような、はたまた実験のような現場でした」
福山がそう語った実際の現場では、事前の打ち合わせで台本は作られていたが、ワンカットごとにそのシーンについて監督と話し合い、演技やセリフを何度も練り直していったという。
「撮影中も、福山さんは監督に、“ここのシーンはぼくはこういうふうに考えるんですが”とよく相談していましたね。
監督もそれを否定するのではなく、“じゃあ、そうしてみようか”といった感じで、ふたりで話し合いながら主人公を作っていくような感じでした。
時間が空いた時には、妻役の尾野真千子さんと子供役の二宮慶多くんとよく遊んでいて、撮影が終わる頃には本当の親子のようでしたよ」(映画関係者)
連日、午後H時近くまで行われた撮影が終わると、宿泊先のホテルでは毎晩のように監督や出演者らと酒を飲み交わし、家族について語りあった。
そうして撮影が進むにつれて、主人公と同じように福山にも変化が起きていた。
時間があれば、実家へ帰るようになり、今年5月12日の毋の日には、実家のリフォーム代金をプレゼントしたことを、福山はラジオで明かした。
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されることが決まったのは、現在放送中のドラマ『ガリレオ』 (フジテレビ系)がまだ始まったばかりの4月18日のこと。
それでも福山は「俳優人生において、こんな大舞台に行ける機会は二度とないかもしれない」と必死でスケジュールを調整。
カンヌに飛び立つ前日の撮影は明け方まで続き、わずかな仮眠をとって機上の人となった。
そのカンヌでの滞在時間はわずか2日。
しかもレッドカーペットを歩いた数時間後には再び飛行機に飛び乗り、そのままドラマの撮影に戻らなければいけないという超強行スケジュールだった。
それでも、自分を変えてくれた是枝監督と現地で喜びを共有したかったのだろう。
そうして迎えた公式上映。
エンドロールが流れると、2000人もの観客から一斉に拍手が湧き、スタンディング点オベーションはおよそ13分も続いた。
想像以上の喝采に戸感うように立ち上がった福山。
その目には涙が浮かんでいた。
何度拭っても流れ落ちる涙。
それまでの彼の家族へのわだかまりも、静かに流れていった。